日本では、2020年の東京オリンピックに向けて水素社会への転換を進めています。
羽田空港に到着した海外の選手団は燃料電池自動車で空港内を移動し、空港から選手村までの移動も燃料電池自動車となる予定です。
東京都は、こうした水素社会の実現のために452億円の予算を計上し、水素ステーションの整備、燃料電池自動車(FCV)の導入促進に充てる予定です。
日本は、2011年3月の東日本大震災での原発事故後、代替エネルギーの輸入ために莫大な費用をかけてきました。
五輪は技術力をアピールし、新たな投資を呼び込むチャンスとなります。
今日は、東京都が目指す水素社会について紹介します。
国と東京都は、FCVの普及と水素ステーションの整備計画を進めています。
現在、販売が始まっているFCV「ミライ」のような燃料電池自動車を購入すると101万円の補助金を出す、水素ステーション設立にも補助金を出すなどが決まっています。
ちなみに「ミライ」の受注台数は目標を4倍上回っており、トヨタ自動車は生産能力の拡大を前倒しで検討しているそうです。
また、東京都は2020年までにFCVを6000台普及させ、水素ステーションを35か所整備するという戦略目標を掲げています。
これからも東京都はこの目標を達成するために全力投球することでしょう。
トヨタ自動車と日野自動車が共同で開発した燃料電池バスの走行実験が行われています。
このバスは、外部給電システムも備えており災害時にも役立つことが特徴です。この走行実験は2015年の7月に実施されました。
走行ルートは都心部(渋谷から練馬、新宿を経由して芝公園に至るルート)と臨海部(お台場、豊洲などの臨海部を回るルート)です。燃料電池バスの走行距離は水素満タンで150km程度です。
今回の検証実験の目的は、実際の交通状況に応じた水素消費量やバスの操作性を検証し、将来的に都営バスとして燃料電池バスをスムーズに導入するためです。この検証結果をトヨタ自動車にフィードバックし、さらなる改良につなげていく予定です。
水素活用のメリットは、第一に二酸化炭素を発生しないということです。これはあくまでの水素使用時の話であり、水素製造時に化石燃料を使用すればこのメリットは損なわれてしまいます。
水素を再生可能エネルギーで製造する必要があります。
例えば、再生可能エネルギーで発電した電気で水を分解し、水素を製造することです。これであれば、二酸化炭素を排出せずに水素を製造することができます。
第二に、エネルギー効率が高いことです。電力会社による発電では6割のエネルギーが無駄になるといわれています。燃料電池による発電はこのエネルギーロスを大幅に解消し、省エネにつなげます。
第三に燃料電池が緊急時(災害などの際の)のエネルギー源になるということです。ですうから、燃料電池は暮らしと命を守る道具となります。
課題はコストが高いことです。コストが低い他のエネルギーと水素を組み合わせて使用する、また当面はコストが比較的低い副生水素を使用するなどの工夫が必要です。
例えば、工業プロセスで排出されたガスから水素を精製する、化石燃料に触媒を混合させ水素を生成することです。
水素供給インフラが整備されるまではこうした方法で製造した水素を使用し、水素の量産化を研究すべきと思います。
水素供給インフラが整備され、量産化法が確立された後、再生可能エネルギーで発電した電気で水を電気分解するなど、再生可能エネルギー由来の水素を増やしていくことが必要です。
また、水素のサプライチェーンを一斉に立ちあげることが必要です。燃料電池自動車と水素ステーションは、お互いの普及を待つ必要があるため、なかなか普及が進みませんでした。
日本は水素利用技術の特許数は世界第一位であるが、インフラ整備の面では世界に立ち遅れています。
2020年に水素立国日本を世界にアピールできるようになるには、インフラ整備に力を入れていく必要があるでしょう。
2016/02/26