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世界各国の地熱発電の導入状況はどのようになっている?

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日本列島は環太平洋火山帯に含まれており、そのため地球内部の熱源を活用する機会に恵まれています。まさに、日本は地熱発電に適した国と言えるでしょう。また、日本だけでなく、世界には地熱発電に適した地域があり地熱発電を積極的に導入している国もあります。

 

そこで今回は、日本以外の地熱発電を導入している主な国々を取り上げ、近年ではどの程度の導入規模になっているかご紹介したいと思います。

 

 

地熱発電設備容量トップ8の国

地熱発電に適する国は、必然的に地熱資源量が豊富な地域となります。世界において地熱発電設備容量の規模が大きい順は以下の通りとなっています。

 

順位 地熱発電設備容量(MW) 熱資源量(万kW)
1 アメリカ 3,112 3,900
2 フィリピン 1,967 600
3 インドネシア 1,189 2,700
4 メキシコ 887 600
5 イタリア 863 150
6 ニュージーランド 769 370
7 アイスランド 665 580
8 日本 502 2,300

(出典:独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構公式ウェブサイト掲載資料を参考に作成)

 

熱資源量が豊富な国は世界各地にあることが分かりますが、その資源をどの程度積極的に有効活用しているかは、国によって違いがあることが分かります。

 

例えば、地熱発電設備容量第2位のフィリピンを見ると、同国の熱資源容量から考えればかなり積極的に地熱発電を推進していることが分かります。

 

一方、日本の熱資源容量は世界の中でも突出していると言えますが、しかし地熱発電設備容量の順位は相対的に低めだと言え、このことより、日本では技術的な観点からは地熱発電の普及余地が残されていると言えるでしょう。

 

国ごとの地熱発電の特徴

次に世界の地熱発電事情についてご紹介します。国によって発電にかける熱量が異なることがわかるはずです。ぜひ参考にしてみてください。

 

アメリカ

地熱発電設備容量のシェアトップのアメリカ。世界最大の地熱地帯であるガイザース地区が有名です。そのほかにも、インペリアル・バレーやカリフォルニア州などに大型の地熱発電所があります。この中でも特にガイザース地区の設備容量が飛び抜けており、全体の50%以上を占めています。ここで発電された電気は、約70万世帯分の電気だと言われており、日本では考えられない規模感です。

 

残りの50%は、インペリアル・バレー、ベーズン・アンド・レンジとその他の地域が占めています。なぜここまで、西海海岸に集まっているかというと、火山地帯が太平洋側にあるためです。

 

このように聞くとアメリカは再生可能エネルギーに積極的だと思われるかもしれませんが、実はアメリカは地熱に関しては後進国でした。というのも、1900年代は地熱の技術も確立されていなければ、投資コストも莫大に必要だったからです。それから徐々に開発が進み、さらに石油の高騰などもあり、地熱発電が電力供給源の一つとして見直され始めました。それから2000年に入り、アメリカ政府が積極的に助成金を地熱分野に投入したことにより、さらに広がりをみせています。

 

日本より国土も広く、資金も潤沢なため地熱の利用が進んでいるのでしょう。

 

フィリピン

地熱発電の国として意外と知られていないのがフィリピン。2010年には国全体の17%の電気が地熱発電によって作られていました。もちろん、他の発電方法がないということもありますが、地熱発電を積極的に推進しているからこその数字です。ここまで地熱発電に力を入れているのは、フィリピンが火山国だということが関係しています。国が地熱発電を将来有望な発電方式と考え、積極的に推進しているのです。

 

フィリピンの地熱発電は、ティウイという地域から始まりました。それ以降、別の島に徐々に広げられ地熱発電設備容量がアメリカに次ぐ世界第2位となったのです。

 

設備容量別に見た場合、ルソン島が全体の50%を占めており、その他をルグロス島、ミンダナオ島、レイテ島が占めています。

 

これからの数字からわかるようにフィリピン政府は地熱発電に力を入れており、投資額も増やしています。特に2010年に作られたロードマップは、2030年まで見据えたものであり、今後のフィリピンの電気事情に大きな影響を与えるでしょう。

 

インドネシア

世界最大級の地熱資源を持ち、今後より一層地熱発電に力を入れていくと思われている国がインドネシアです。インドネシアは、10,000以上の島が連なって形成されている国であり、そのほとんどの島に地熱資源が分布していることがわかっています。地熱発電の設備は、それぞれの島に平均的に分布しています。

 

インドネシアの裏事情として、経済発展が進むにつれ電力の安定供給が課題となっていました。そこで、インドネシア政府は安定供給ができる地熱発電に目をつけ、大幅な設備の増強をすることとしました。2010年時点で、2025年までには世界首位の発電量を目指すと当時の大統領が名言しています。最近では徐々にその成果も出始め電力の5%を地熱発電が占めるようになりました。

 

ただ、インドネシアは課題も抱えています。広い国土の80%以上が森林であり、地熱発電を導入することで環境破壊に繋がるのではないかと言われています。今後、どの場所にどの程度の規模の発電所を建設していくのか、インドネシア政府は検討していかなければいけません。それをサポートするのが、技術力がある日本の会社です。特に、東芝、丸紅、伊藤忠などの大企業は、積極的に設備の営業をかけています。

 

イタリア

実はイタリアは、世界最初の地熱発電国です。地熱発電の設備は、トスカーナ地方にほとんど分布しており、その他はモンテ・アミアタ、ラディコンドリなどに分布しています。

 

世界初の地熱発電は、1904年にラルデレロ地方で成功を収めました。それから徐々にイタリア全土に広げていきましたが、戦争により設備が焼失してしまいました。

 

ニュージーランド

ニュージーランドは、太平洋にあるため地下資源も豊富にあります。特にニュージーランドが優れているところは、世界唯一のトリプルフラッシュ発電設備があることです。

 

地熱発電には、シングルフラッシュ、ダブルフラッシュが主に世界で使われています。シングルフラッシュは、蒸気だけを使いタービンを回すシンプルな方法で、日本でも一番使われています。ダブルフラッシュは、水蒸気だけではなく、熱水も取り出し、その熱水からさらに水蒸気を取り出す方法です。トリプルフラッシュは、これにもう一つ蒸気を取り出す仕組みを取り入れ無駄のない発電が可能になりました。

 

このように、日本以外でも地熱発電の開発や導入は徐々に進んでいます。しかし、この国々の設備の半分以上は日本製です。つまり、日本には地熱発電の技術はあり、あとは規制の問題をクリアするだけということです。

 

日本の地熱発電開発の進捗が遅れている理由

上記データから、他国と比較して日本は熱資源量が豊富にあるにも関わらず地熱発電開発に遅れが生じていることが分かります。なぜ、日本では地熱発電開発の進展が遅いのでしょうか?

 

その理由の一つに、自然環境保全の問題と地域産業への影響が考えられます。日本国内に存在する熱資源はその多くが自然環境保全地域として指定されています。そのため、自然環境保全の方針と地熱発電開発の整合性がうまく取れないことが、進捗の遅れを引き起こしていると思われます。

 

また、熱資源が存在する周辺は温泉地となっており、そのため地熱発電開発に対する地域の反対の声も開発の遅れに影響していると考えられます。地熱発電開発を行うことにより、地域の景観が損なわれることや、温泉の質と量の低下が危ぶまれることが反対の主な理由となっています。

 

 

今後普及が見込まれる地熱発電の方式

地熱発電の方式には、現在の主流であるフラッシュ方式や、熱水温度が低くても熱源を活用できるバイナリー方式がありますが、世界的にみれば「涵養地熱系(EGS:Enhanced Geothermal Systems)」と呼ばれる方式が普及するという予測もあります。

 

EGSでは、高温の岩盤に地上から水を注入して蒸気を発生させる高温岩体発電方式が主要になっており、現在はアメリカ、ドイツ、フランス、オーストラリアなどで積極的に技術開発が行われている段階です。そのためコストも高い状態ですが、今後の技術革新により、あらたな地熱発電方式として期待が持たれています。

 

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?日本以外に地熱発電を積極的に導入している国があることがご理解頂けたかと思います。

 

地熱発電を積極的に導入している国々は、いずれも火山帯のような地熱資源を活用できる地域に属しており、また、日本以上に積極的に地熱発電を導入している国も多くあります。日本は、熱資源量に比較して地熱発電設備容量は少ないと言え、他国の導入状況からみれば日本では技術的に地熱発電普及の余地が残されています。

 

日本で地熱発電を普及するためには、自然環境保全の規制緩和や温泉地との共存の仕組み作りといった取り組みが必要です。

 

それらの制度的、政策的な問題が克服できれば、日本の熱資源量は世界的に見ても突出しているため、地熱発電の潜在的な大きな力が発揮されるようになるでしょう。

 

 

(参考)

・独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構公式ウェブサイト「地熱エネルギーとは : 地熱発電の概要 : 世界の地熱発電」

http://geothermal.jogmec.go.jp

 

・NEDO『再生可能エネルギー技術白書 第2版』 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構編

http://www.nedo.go.jp

2017/11/10

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