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地熱発電の持つ長所と対応すべき短所

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地熱発電は、地中深くに存在する熱源からの水蒸気を活用して電気を生みだします。地球そのものがボイラーとなることから、安定して永続的な電力供給が期待できます。

 

その他、地熱発電にはいくつもの長所がありますが、同時に地熱発電の持つ特徴が短所になり得ることもあります。

 

そこで今回は、地熱発電の持つ長所と、そして対応すべき短所について整理してみたいと思います。

 

地熱発電の仕組みと種類

地球は、中心から内核、外郭、マントル、地殻の4つに分けられます。地熱発電には、マントルと呼ばれる、岩石が高熱により溶かされたマグマ層の蒸気や熱水を使います。

 

日本には活火山が110以上あるとされており、その近くにはマグマ溜まりがあり、周りの岩を熱しています。マグマ溜まりによって熱せられた周辺の水は、水蒸気や熱水となり岩盤の中に蓄積されます。地熱発電は、この貯まった水蒸気や寝水を使うことで発電をおこないます。この貯まった水は雨水が熱せられたものがほとんどですので、マグマがある限り永遠と取り出すことが可能です。

 

また、発電の仕方は2つに分けられます。

 

1. 蒸気発電

蒸気発電は、地下から出てくる水蒸気を利用して直接タービンを回す方法です。さらに、蒸気だけを使う蒸気卓越型と、熱水が混じっている熱水卓越型の2つに分けられます。蒸気卓越型は、とてもシンプルな方法で日本の発電所のほとんどすべてがこの方法を取っています。もう一つの熱水卓越型は、熱水からさらに蒸気を取り出し、高圧蒸気と低圧蒸気に分けてタービンを回す方法です。日本でこの方法を取っている発電所はほとんどありません。

 

2. バイナリー発電

蒸気発電に加えてバイナリー発電が徐々に可能性を広げています。

 

地熱流体が150℃程度以下の中低温であれば、分離した蒸気では直接タービンを回すことができません。その場合、水より沸点が低い媒体(水とアンモニアの混合物等)と熱交換し、この媒体の蒸気でタービンを回す発電方法があり、バイナリー発電と呼ばれます。この発電方法は地熱発電の可能性を大きく拡げるもので、中小規模の発電所数が年々増加しています。

 

出典:独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構
http://geothermal.jogmec.go.jp/information/geothermal/world.html

 

このような発電方法は、最近では温泉街でよく使われるようになっています。

 

高温の温泉水が噴出する温泉地では、浴用に利用できない50℃以上の熱水は、冷まして使う必要があります。しかし、バイナリー発電を用いれば、高温温泉(70〜120℃)の熱水で発電した後、温度の低下した熱水を浴用に利用でき、一石二鳥です。新潟県十日町市の松之山温泉では温泉バイナリー発電の実証実験が行なわれました。また、福島市の土湯温泉では、400kW級の温泉バイナリー発電が2015年11月から運転を開始し、順調な発電を継続しています。

 

出典:独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構
http://geothermal.jogmec.go.jp/information/geothermal/world.html

 

このように、地熱発電の発電方式は日本の地理や生活習慣にとても相性がいいものです。今後も活用の幅が広がっていくことは間違いないでしょう。

 

地熱発電の長所

地熱発電には数々の長所があり、その主なものは以下が挙げられます。

 

・CO2排出量が極めて少ない

地熱発電では、発電の際に燃料を燃焼させる必要がないため、CO2の排出を極力抑えることができます。

 

kWhあたりのCO2排出量(g・CO2)について、他の発電方式を確認すると、例えば石炭火力の場合は975で、石油火力の場合は742、そしてLNG火力で608となっています。

 

同じ単位で比較すると地熱発電の場合は15となっており、CO2排出量は圧倒的に少ないと言えます。他の再生可能エネルギーと比較しても、例えば太陽光発電は53、風力発電は29であり、再生可能エネルギーの中でも地熱発電はCO2排出量が少ないタイプと言え、地球温暖化防止に寄与する発電方式と言えます。

(データの引用:資源エネルギー庁「地熱発電のメリット」)

 

・純国産のエネルギーである

日本は環太平洋火山帯に位置するため、地熱を活用する機会が多くあります。そのため、海外からの輸入に頼る化石燃料と異なり、海外の政治経済情勢に左右されて価格が乱高下したり供給が途絶えたりしません。

 

・安定した電力をまかなえる

同じ再生可能エネルギーでも太陽光発電や風力発電は、天候や時間によって発電量に変動が起きますが、地熱発電は安定して電力を生み出すことができます。

 

・エネルギー資源の枯渇が心配ない

化石燃料のようにエネルギー資源を採掘する必要が無いため、資源枯渇の問題はありません。持続可能なエネルギー社会に寄与出来ます。

 

 

地熱発電の短所

以上のように、地熱発電にはいくつもの長所があるものの、現状では対応すべき短所も残されており、主に以下の事項が指摘されています。

 

・自然破壊の可能性

地熱エネルギーは、国立公園として指定されているエリアに多く存在します。そのため、今後、地熱発電所の建設を拡充するためには、自然保護区域へ人工的に手を加える必要があり、自然環境破壊の可能性が出てきます。

 

・地域産業への影響

熱水や蒸気が取り出せる地域は、温泉地であることが珍しくありません。そのため、地熱発電にそれらエネルギー源を活用すれば、温泉として活用できる湯が減少する可能性も指摘されており、地域の温泉産業や観光産業への影響が懸念されています。地熱発電所建設にあたっては、地域住民への十分な説明が必要です。

 

・建設中の振動や騒音

地熱発電では、地中の熱水や蒸気を取り出すための生産井を掘る必要が有り、また、使用後の熱水を地中へ戻す還元井も掘る必要が有ります。相応規模の井戸を掘ることになるため大規模な工事になり、ボーリング作業等によって振動や騒音が発生してしまいます。

 

・実用化までの期間と建設コストの高さ

地熱発電所を稼働させるためには、地質や地盤の入念な調査が必要となります。その調査は何年にも渡ることが珍しくなく、また発電所の着工が決定されても完成までに工期が長くかかります。そして大規模な施設になるため、コストが膨大になる傾向があります。

 

世界の地熱発電

地熱発電には、メリットもありますが、今後改善していかなければいけない点もあることがお分かりいただけたのではないでしょうか。しかし、日本の生活習慣や地理と相性のいい発電方式であるため、今後広がっていく可能性が高い発電方法です。

 

その証拠に、世界の地熱資源を見たときに、日本は2,300万kWと言われています。これは世界第3位の数字です。世界1位がアメリカで、2位がインドネシアで、どちらも国土が日本以上に広い国です。ちなみに第4位はフィリピンで、600万kWですので、上位3位が飛び抜けて地熱資源を持っていることになります。

 

日本は、今まで資源のない国と言われてきました。しかし、まだ私たちが知らない地下に多くの資源が眠っていたということです。この資源を使わない手はありません。今後、日本での地熱発電の開発が期待されます。

 

日本の地熱発電

日本の地熱発電の歴史を振り返ると50年以上昔になります。実は、地下の蒸気を使った発電方式は、それだけ昔から利用されてきたのです。それから東北と九州を中心に地熱発電所が建設され現在では、全国38箇所に発電所があります。

 

ここで驚くべき事実として、日本全国に発電所があるわけではなく、九州、関東地方、東北、北海道に発電所が偏っています。これは、火山フロントが日本でも一部の地域にしかないということです。

 

世界中を見ても、日本は地熱発電の開発に力を入れてきました。しかし、実は2000年になる前までは開発があまり進んでいませんでした。それが変わる大きなきっかけになったのが、2012年の規制緩和です。FITという電力の固定価格買取制度が始まり、再生可能エネルギーで発電された電力を電力会社が一定の価格で買い取ることができるようになりました。また、地熱発電の開発に対して助成金が出るようにもなり、地熱発電の開発は一気に進んでいきました。

 

まとめ

地熱発電は CO2の発生を抑えつつも安定的な発電が可能になります。そのため、地熱発電は持続可能なエネルギー社会を実現させるための一つの方法として、重要視されています。

 

しかし、自然環境や地域産業への影響が懸念されており、膨大な建設コストの問題も課題として残っています。地熱発電の今後の拡充のためには、それらの難しい課題に対応していく必要があるでしょう。

 

地熱発電と自然環境や環境資源との共存を図る対策が、今後も検討されていくものと思われます。

 

(参考)

 

資源エネルギー庁公式ウェブサイト 「地熱発電のメリット」

 

http://www.enecho.meti.go.jp

 

独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

 

http://geothermal.jogmec.go.jp

2017/11/01

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